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《小説》ウルトラマンの墓参り 竹内義和 [小説/本]


ウルトラマンの墓参り

ウルトラマンの墓参り

  • 作者: 竹内義和
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: 単行本


まさにウルトラマン世代の私の目に飛び込んできたこのタイトル。

しかし、ウルトラマンの名に全くそぐわない「墓参り」という言葉。

その違和感に惹かれて思わず図書館で手に取り、
そのまま借りることになった。

どんな内容の話なのかも全く分からないまま読み始めると、
そこはこてこての大阪が舞台。

登場するのは夏木祐太朗という20歳の青年。

ウルトラマンというパワーあふれるイメージとは裏腹に
祐太朗は大学もサボり、かといって仕事もしない無気力な男だった。

物語の前半はほとんどそんな祐太朗の自堕落な生活が描かれ、
タイトルのウルトラマンはいったい何なのか、と読んでいて疑問さえ生まれた。

しかし、そんな祐太朗を変えることになったのは
浅黄智也と赤井楚良との出会いだった。

智也と楚良の働く京橋のパチンコ屋で祐太朗も働くことになり、
祐太朗は智也の指導の下、肉体を鍛える。

祐太朗と智也の共通点は、ウルトラマンや怪獣が大好きだということ。

智也は怪獣と戦うウルトラマンを見て、自らの肉体を鍛え、
技を磨いてきたという。

二枚目であり、喧嘩も強いが、とても人にやさしい智也に
祐太朗は憧れ、楚良は心惹かれていた。

祐太朗→楚良、楚良→智也という恋のベクトルはいかにもだが、
智也はある偶然から年上の女性、香奈に向いている。

物語のクライマックスは、この香奈に起きた事件から。

事件で生命を奪われた香奈、その息子の直樹が重傷を負ったことから
智也はその仇を討つことを決心する。

怪獣ウーの姿を借りて、・・・
そして祐太朗はウルトラマン。

自堕落な生活をしていた祐太朗がウルトラマンにいかに変身していくか。

ウルトラマンを使ったタイトルだけ見ると、軽薄に見えるかもしれないが、
中身はなかなかこてこて、かつ激しい。

その激しさはぜひ作品を読んで確認していただきたいが、
何せ大阪の濃さがあまりにも濃すぎて
大阪以外の人にはどうやろ?という気がしないでもない。

また、ウルトラマンを引き合いに出すことが、
ウルトラマンファンにとって賛否分かれるところかもしれない。

ま、でも良くも悪くもショッキングな小説には違いない。


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《小説》ばんば憑き 宮部みゆき [小説/本]


ばんば憑き

ばんば憑き

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/01
  • メディア: 単行本
  • 坊主の壺
  • お文の影
  • 博打眼
  • 討債鬼
  • ばんば憑き
  • 野槌の墓

以上6編収録。

主のない子供の影、
人の欲望が作り出した黒い化け物、
殺された子供の魂が道具にこもった物の怪、などなど・・・

江戸の街に繰り広げられる不思議な物語は
不幸にも命を奪われた者の魂、
あるいは人の心の中に潜む欲望が作り出す化け物たちが
主役だ。

「討債鬼」や「ばんば憑き」などは
特にホラー色の濃い作品だが、
ただ恐ろしいのではなく、人の心の悲しさが残る。

宮部みゆき作品は
時代小説や現代を舞台にしたミステリーにしても、
罪を犯した者やその被害者をいつも優しく見つめる。

だから、ただただおどろおどろしいのではなく、
何とも心地よい読後感が残る。

特に、この作品集「ばんば憑き」は
事件や物の怪の姿を借りながら
人の命や心を慈しむ作者の優しさが感じられる。


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《小説》陽暉楼 宮尾登美子 [小説/本]

陽暉楼 (文春文庫)

陽暉楼 (文春文庫)

  • 作者: 宮尾 登美子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 文庫

昭和初期、高知の花街の厳しい物語だ。

高知の貧しい魚屋の娘として生まれた房子は、
親の借金のために12歳で売られるが、
一途に芸を磨いて陽暉楼一の芸妓“桃若”となる。

芸妓といえども、やがて客を取るようになるのだが、
相手はもちろん年寄りばかり。

芸妓や店にとっては大切なスポンサーである以上
拒むことはもちろんできず、
房子も意に沿わぬ相手と夜をともにする。

そんな房子の運命を大きく変えることになったのが
ある時宴会客の中にいた若い佐賀野井との出会いであった。

佐賀野井に心惹かれた房子はやがて彼から声がかかり、
ついに彼の子を宿すことになる。

難産の末生まれた子供は房子の両親の家に預けられるが、
房子は産後の肥立ちが悪いにもかかわらず
店からは“桃若”として座敷に出ることを強要され、病に倒れる。

客は、芸妓に子供ができたとて認知したり
ましてや我が子として引き取るなどありえず、
その子はしかるべき筋から里子に出されるのが
芸妓の世界の悲しいさだめ。

それでも房子は佐賀野井を思い、待ち続けながら、
最後は彼もやはりただの遊びの客であったことを悟る。

水商売の悲しさ、厳しさ。

それをわかっていながら、
房子は佐賀野井にだけは純情だったといえよう。

さて、この作品中出てくる話し言葉はもちろん土佐弁。
(私の両親が高知出身なので土佐弁はほとんどわかる)

ただ、文体は旧仮名遣いで書かれていて、漢字も旧字体。

その点、読むのにちょっと苦労したが、
確かに読み応えのある作品だ。


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《小説》ドールズ 闇から招く声 髙橋克彦 [小説/本]


ドールズ 闇から招く声 (文芸シリーズ)

ドールズ 闇から招く声 (文芸シリーズ)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/09
  • メディア: 単行本



なんでか最近
こういういかにも怪しげなタイトルの本を読んでいる。

この作品をいきなり読んだのだが、
最初どうも人物がよくわからなかった。

特に、怜という幼い女の子が
べらんめえ口調なのが理解できず
別の人物かと勘違いしたが、
江戸時代の人形師、泉目吉が現代の女の子の身体に転生したものとわかるのに
しばらく時間がかかった。

それもそのはずで、
この作品の前に「ドールズ」シリーズ2作があるのだが、
私はそんなことも知らず3作目に当たる
この作品をいきなり読んでいたのだ。

髙橋克彦作品のファンの方が見たら、きっと
そんなことも知らんの?と馬鹿にされるかもしれないが、
最近私はあまりなじみのない作家の本を読み始めているところで
髙橋克彦作品に関しては若葉マークの初心者だということで
温かい目で見てやって下さい。(^_^;)

さて、作品について

プロローグでいきなり凄惨な殺人現場が描写される。

あまりにもえぐい情景なのでここで書くのは控えるが、
あとがき(解説)にもあるようにこの作品は
いわゆるホラー小説であり、
この場面は昔流行ったスプラッター映画を思わせる。

あまり映像では見たくないシーンだ。

本編にはいると、
割とのんびりした展開で始まるが、
事件が起きると次々と状況が変わる。

恒一郎、怜=目吉、怜の父である真司、
それに医大の戸崎、松室らの推理で
事件が落ち着くかと思いきや、
目吉の推理の中で疑問が残る。

そこからまた新たな展開となって、
一つの事件が思いも寄らぬ方向に進んでいく。

殺人現場の描写は確かにホラーだが、
物語の展開の仕方はミステリーだ。

そして、一連の事件の真犯人は
誰も疑いをもつことのない思わぬ人物であることがわかってくる。

この展開は
怜=目吉という不思議なキャラクターがあってこそのおもしろさだ。

それにしても
もし自分が今の自分の意識のままで
別の人物の身体に入ってしまったら、と思うと・・・

目吉のように時代も場所も越えてよみがえるということは、
浦島太郎ではないか。

ましてや男でありながら女の子の身体に宿る
(またはその逆も)なんてぞっとする。

それこそホラーかもしれない。


《小説》夢にも思わない 宮部みゆき [小説/本]


夢にも思わない

夢にも思わない

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1995/05
  • メディア: 単行本



主人公が中学一年生の少年で、
正直ちょっと借りる本を間違えたかなと思った。

文章も中学生前後の読者に読みやすいよう
平易な言葉や表現が使われている。

事件としては
公園で起きた殺人事件から
主人公の少年やその友人を通じて
少女売春組織の存在が浮上してくる。

他愛のない中学一年生の少年と同級生少女の恋愛物語と絡めて
裏社会のショッキングな実態が描かれているのは、
なかなかほかの作品では見られないのではなかろうか。

宮部みゆきならではのものといえるかもしれない。

もちろん、物語の終盤に至って事件は収束するのだが、
この事件を経験した主人公の少年と彼女、友人たちとの間に
微妙な信頼関係の揺らぎが出てくる。

そのあたりの純粋な心理状態や変化は、
子供から大人へと成長の途上にある中学生の姿を借りてこそ
描けるのかもしれない。

大人だとなかなかこうはいかない。

ちなみに、この作品は「今夜は眠れない」という作品の続編のようだが、
実は私はまだ読んでいない。


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